慢性甲状腺炎,橋本病の詳細

 甲状腺に慢性的に炎症が生じるもので、20〜30代の女性に最も頻度が高いですが、思春期の女子にもみられます。
 慢性甲状腺炎は1912年、橋本策(はかる)博士により報告された病気で、橋本病とも呼ばれています。

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慢性甲状腺炎は1912年、橋本策(はかる)博士により報告された病気で、橋本病とも呼ばれています。 橋本病は女性に圧倒的に多く、最近の研究では10人に1人かそれ以上の頻度ではないかといわれています。橋本病についてくわしく解説します。

慢性甲状腺炎(橋本病)とはどんな病気?

本来は外部から入り込んだ異物に対して起きる免疫反応が、自分の体の細胞に対して起きて甲状腺の細胞が壊れ、細胞と細胞の間に線維化が起こる臓器特異的自己免疫疾患(ぞうきとくいてきじこめんえきしっかん)です。 20〜30代の女性に最も頻度が高いですが、思春期の女子 にもみられます。

甲状腺の病気やはたらきとは?

甲状腺は、通称“のど仏”の下につながっている気管軟骨の前面に、蝶が羽を広げたように張りついています。重さは約10グラム、大きさはマグロの刺身(やや大きめ)二切れほどで、ホルモンを出す内分泌腺としては人間の体の中で最大です。そうはいっても、健康な人の甲状腺は柔らかくて筋肉に覆われているので触ってもわかりません。ですから、 甲状腺がはれて大きくなったり、硬くなったりして触れるときは、甲状腺の病気が疑われます。

甲状腺の体内での役目は、 ヨードを取り込み甲状腺ホルモンを作って血液中に分泌 することです。いわば、ヨードを材料としてホルモンを作る工場のようなものです。 甲状腺ホルモンは体の新陳代謝を高め、人間のあらゆる臓器の働きを促進する作用 があります。

甲状腺ホルモンはほかのホルモンと同様に、食べ物には含まれていませんので、食事では体のホルモン量を調節できません。もちろん、材料のヨードの摂取が不足すると甲状腺ホルモンの生産量は減少します。逆にヨードの摂取が多すぎると、甲状腺は故障してホルモンの生産は低下してしまいます。昔から伝わる一般的な日本食には、ヨードを含んだ海藻類も適当に用いられており、私たちには一番よいと思います。

甲状腺のホルモンが多すぎる病気 (甲状腺機能亢進症)の多くは バセドウ病 です。体中の臓器の新陳代謝が活発になり過ぎるため、見た目にもイライラして落ちつきがなく、暑がりで汗も多く、動悸(どうき)があり脈拍が速く、体重は減少します。しかし、よく食べて、動き回るので、周囲の人からは重症の病気とは思われず、元気そうに見えて誤解されることもあります。この病気の症状で一般によく知られている眼球の突出はおよそ半数の人に見られるものの、全ての患者に現れるわけではありません。

一方、 甲状腺ホルモンが少なすぎる病気 (甲状腺機能低下症)の代表的な病気は 慢性甲状腺炎(橋本病) による機能低下症です。新陳代謝が低下するので、寒がりで眠たがりになり、汗は少なく乾燥肌で、胃腸の動きも悪く便秘がちで、仕事をする意欲も低下します。これらの症状は長い月日をかけて、 ゆっくりと進行するので、本人も家族も見逃してしまう ことがあります。

慢性甲状腺炎(橋本病)の症状とは?

甲状腺は予備能力の大きな臓器なので、少しくらい破壊されても甲状腺ホルモンを作る能力が低下することはありません。しかし、 破壊が甲状腺全体に広がると機能低下症 になります。炎症といっても、 何年もかかってゆっくりと起こる炎症 なので、 痛みや発熱が起こることはありません。

甲状腺腫は全体にはれていて硬く、表面はこぶ状あるいは小顆粒(かりゅう)状に触れます。大きさはさまざまですが、よほど大きくないかぎり、物が飲み込みにくくなったり、呼吸困難になることはありません。

甲状腺の機能も大半は正常 なので、橋本病というだけでは とくに自覚症状もなく、治療の必要もありません。 しかし、加齢とともに甲状腺機能低下症(こうじょうせんきのうていかしょう)の頻度が増して、最終的には軽度のものも含めると20〜30%は機能低下症になります。甲状腺機能低下症からみると、原因の大半は橋本病です。

甲状腺機能低下症になると 寒がり、便秘、記憶力・計算力の低下、眠気 などを自覚するようになり、さらに低下症が進むと 顔面がはれぼったく、むくむ ようになります。慢性甲状腺炎で甲状腺機能低下症になった例でも、時に甲状腺の機能は回復することがあります。無痛性甲状腺炎といって、逆に一過性に甲状腺ホルモンが増えることもあります。

慢性甲状腺炎(橋本病)に気づいたらどうすればいい? 治療法は?

甲状腺機能が正常で甲状腺腫が小さい時は、とくに治療は行いません。 甲状腺機能低下症の時は、甲状腺ホルモンを投与します。

甲状腺刺激ホルモンだけが高値で、甲状腺ホルモンの値が正常なものを潜在性(せんざいせい)甲状腺機能低下症といいます。放置すると動脈硬化症や、はっきりとした甲状腺機能低下症になる可能性が高いので、やはり甲状腺ホルモンを投与します。

橋本病が医療費の補助の対象になっている県もあるので、難病ではないかと心配される患者さんがいます。しかし 決して難病ではなく、 甲状腺ホルモンの測定を時々受け、ホルモンが低下しているということがわかれば、甲状腺ホルモンの服用を始めるだけでよいのです。橋本病と診断されても、あまり心配はしないようにしてください。

甲状腺の病気は、ほかの病気と間違えられやすいって本当?

甲状腺ホルモンは人間のあらゆる臓器・組織の新陳代謝にかかわっているため、その分泌に変調を来たすと 体全体にさまざまな形で影響 が現れ、ほかの病気と間違えられることもしばしばです。

ホルモン分泌が過剰になるバセドウ病 は、ちょっと動いただけで心臓がドキドキと脈打ち、頻脈となるため 心臓病と間違えられます。 脈の乱れ(不整脈)があればなおさらです。のどが渇き、水をほしがるので 糖尿病 を疑われることもあります。

いずれの場合も、高齢者では 精神病を含めていろいろな病気と誤診 される可能性が高く、学生では友達との関係が悪化して 登校拒否 になったり、 先生から怠け者扱い されて退校にいたることさえあります。また、閉経時の女性では 更年期障害 などを疑われることも少なくありません。

別の病気と間違えやすい 甲状腺の病気を正しく見極めるには、やはり甲状腺専門医を受診するのがよい でしょう。甲状腺専門の施設では 1時間もあれば適切な検査と診断と治療方針 が得られます。日本甲状腺学会では、学会認定の専門医を都道府県別にホームページ(http://www.japanthyroid.jp/)で公開しておりますので、参考にしてください。