認知症介護の相談㊲実際にはいないものが見える幻視や錯視の対応策


  • 出典:株式会社法研「認知症の9大法則 50症状と対応策」
  • 著者:杉山 孝博川崎幸(さいわい)クリニック院長

「大きな犬が吠えている!」「おじいちゃん、何もいませんよ」。「うわっ。こっちに飛びかかろうとしているじゃないか!」。沢村光彦さん(仮名75歳)はときどき、実際はそこにはいない物が見えるようです。ある日は、部屋の天井を指して「犬がこちらを見ている」と言い出しましたが、そこには何もいません。

認知症の人の状態・気持ち

現実にはないものが見える「幻視(げん し)」は、認知症のなかでも、神経細胞にレビー小体という特殊な物質が沈着して起こる、レビー小体型認知症に多い症状です。脳の後頭葉という場所にある視覚野が障害され、何もなくても見えていると認識してしまいます。

レビー小体型認知症は、認知症患者の約20%を占めていて、パーキンソン病のような手足の震えや歩行障害、うつ病のような症状があります。

レビー小体型認知症による幻視は立体的で、リアルで、「亡くなった人や昔の知り合いなどが訪ねてきた」「部屋の中にヘビがはっている」などと言ったり、「すでに亡くなっている母が話しかけてきた」などと、幻聴が伴うこともあります。日や時間によって症状の重さが異なる"日内変動"が激しいのも特徴です。

幻視や錯視(さく し)(見間違い)は、レビー小体型以外の認知症でも起こることがあります。意識が混濁するせん妄になると、幻視はとくに起こりやすくなります。また、家具や置物などを人や関係のない物と見間違うこともあります。

対応策

① レビー小体型認知症は、アルツハイマー型認知症やパーキンソン病、うつ病などと誤診されることが少なくありません。治療に効果が感じられない場合は、医師に相談しましょう。パーキンソン病のような症状が出るとつまずきやすくなるので、転倒にも注意しましょう

② 幻視は周りの人には見えなくても、本人にとっては現実です。「何もいないじゃない」などと言って否定しても意味はありません。本人に混乱やおびえがなく、家族にもあまり影響がなければ、「そうだね、いるね」などと話を合わせながら、自然に話題を変えるようにしましょう。

「部屋に知らない人がいる」などと言って怖がるときは、部屋の中を探して「大丈夫。もういなくなったよ」などと穏やかに言いながら、安心してもらいましょう。

 幻視があるときは、指さすほうをしばらく一緒に見て、しばらくしてから「もういなくなりましたね」と声をかけましょう。


③ 家具などの物を人などと見間違えて怖がるときは、原因となっている物を、目に入らないところに動かしましょう。

④ 幻視や幻聴は、加齢や病気による目や耳の異常が原因で起こることもあります。眼科や耳鼻科を受診してみましょう。


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