認知症介護の相談⑯甘いものばかり食べたがる理由と対応策


  • 出典:株式会社法研「認知症の9大法則 50症状と対応策」
  • 著者:杉山 孝博川崎幸(さいわい)クリニック院長

「おじいちゃん、また甘いものを食べているの? 栄養が偏っちゃうから、まずはご飯を食べましょう」。

酒井弘さん(仮名82歳)は、饅頭、団子、ケーキなど、甘いものばかり食べたがります。三度の食事でも甘めのおかずとデザートしか食べません。家族は、これでは栄養が偏ってしまうと心配しています。

認知症の人の状態・気持ち

認知症の人は、記憶力とともに判断力も低下するため(第1・記憶障害に関する法則)、栄養のバランスを考えて食べることが難しくなります。個人差はあるものの、味覚障害も起こりやすく、甘味、酸味、塩味、苦味、うま味の基本の味のうち、甘味は認知症が進んでも最後まで残るといわれています。

特定の味に限らず、テーブルに料理が何品か並んでいても、同じ料理しか食べない場合は、一品を最後まで食べ切らないと気が済まなくなっていたり、ご飯、おかず、汁物などをバランスよく食べることがいいことだとわからなくなっていたりする、などの理由が考えられます。

また、脳梗塞や脳の委縮などが視神経に影響を及ぼして、視野狭窄(し や きょう さく)(視野が狭くなる)になっていると、テーブル全体が視野に入らず、見える範囲の料理しか認識できないこともあります。

しかし、食事は1日3食トータルで考えてバランスが極端に悪くなければ、あまり心配はいりません。バランスよく食べることを執拗に説得するのではなく、無理なくほかのものも食べてもらうよう工夫しましょう。

対応策

① 高血圧や糖尿病などの持病があり、食事制限の必要があるのに、制限されているものばかり食べたがるときは、それらの食べ物を目につくところに置かないようにしましょう。

② おかずを食べようとしない人でも、ご飯の上におかずをのせると食べることがあります。食べている最中に、子どもに対してするように、横からおかずをのせたりすると不機嫌になる人もいるので、最初から丼物のようにご飯に具をのせるか、本人が見ていないときに、少しずつさりげなく取り分けるといいでしょう。

③ 次に何を食べればいいか、わかりやすいように「漬物もありますよ」「スープはおいしいですね」など、声をかけながら一緒に食べましょう。

④ 高齢者は視野が狭くなっていることがあります。テーブルの狭い範囲しか見えていないように感じたら、見える位置に料理を移動させましょう。

病気による視野狭窄の場合は、治療が必要です。可能性があると感じた場合は、医師に相談しましょう。

ただし、食べている途中で急に器を動かすと不安になることもあるので、食事の合間、料理から注意がそれているときに動かしましょう。

⑤ 認知症になると、箸やスプーンの使い方がわからなくなることがあります。箸を握ってつき刺せるようなおかずだけを食べていないかなど、ときどき食べ方を確認しましょう。

箸が使えなくてスプーンを使う、どちらも使えず手づかみで食べようとしている場合は、手でつかみやすい料理を用意するなどしましょう。


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