【認知症の基本情報】中核症状と周辺症状(行動・心理症状)とは?

中核症状と周辺症状(行動・心理症状)



  • 出典:株式会社法研「認知症の9大法則 50症状と対応策」
  • 著者:杉山 孝博川崎幸(さいわい)クリニック院長

認知症の症状は、主に中核症状と周辺症状(行動・心理症状)に分けられます。中核症状は、記憶障害、見当識障害、理解・判断力の障害、実行機能障害、失語、失行、失認などがあります。すべての認知症の人にいずれかの症状が現れます。

アルツハイマー型認知症の典型的な兆候は記憶障害です。記憶は新しいことを覚える「記銘」、頭の中に覚えたことを保存しておく「保持」、必要な時に思い出す「想起」などの手順があり、認知症の初期には記銘の問題が起こりやすくなります。また、出来事の記憶は失われがちですが、楽器の演奏など体で覚えた記憶は長く保たれます。

季節に合わない服を着るのは、季節や時間の感覚が薄れる見当識障害、不自然な行動や些細なことで混乱するのは理解・判断力の障害、料理の味付けが変わった、物事の段取りがうまくいかないなどは実行機能障害にあたります。

周辺症状(行動・心理症状)は、脳の機能が低下し生活が不自由になることによって生じる混乱や、周囲の環境などによって引き起こされる症状で、中核症状と違いすべての人にみられるわけではありません。うつ状態になる、親族が財産を狙っているなどと疑う、夜中寝ないで騒ぎ家族を起こす、物事に異常にこだわるなど、認知症の人の家族がよく悩まされるのが周辺症状(行動・心理症状)です。

中核症状と周辺症状(行動・心理症状)は別々に現れるわけではなく、中核症状がベースにあり、その上で周辺症状(行動・心理症状)が起こります。たとえば、財布をどこかにしまったものの忘れてしまうのは中核症状(記憶障害)ですが、そこに自分の非を認めたくない気持ちや、家族に対する被害意識などが加わり、財布を家族が盗ったなどという(もの盗られ妄想)周辺症状(行動・心理症状)が現れます。

このように周辺症状(行動・心理症状)は、元々の性格や環境、人間関係などが影響するため、症状の現れかたや度合いは人によって異なります。つまりその人をよく理解し、症状の原因となっている環境や人間関係などを変えることによって、症状を改善することができます。

中核症状 認知症の基本的な症状

記憶障害 アルツハイマー型では、新しい記憶から古い記憶へとさかのぼって忘れていく。血管性認知症では、症状は人により異なる。
見当識障害 最初は、何年何月何日などの「時間」、次に、方向や距離などの「場所」、最後に親族や友人など「人物」の順に認識が薄れる。
実行機能障害 献立を考え買い物に行き調理するなど、計画を立て、順序通りに実行し、やりとげることができなくなる障害。
理解・判断力の障害 的確な状況判断ができなくなり、場違いな行動を取ったり、2つ以上のことを同時にできなくなったりする。
失 行 運動機能に障害がないのに、服を普通に着られない、使い慣れた家電が使えないなど、今までできていたことができなくなる。
失 語 言いたいことをうまく話せない(運動失語)、相手の話が理解できない(感覚失語)、名称を間違える(錯誤(さくご))など。
失 認 近くにあるものが見えない、人の顔や遠近感がわからないなど、さまざまなことを認識できなくなる。

周辺症状(行動・心理症状)

心理症状 抑うつ 自信を失い、意欲や気力が低下する。落ち込む
幻 覚 実際にはないものが見える、ない音が聞こえる
興 奮 突然興奮して怒り出す、騒ぐ、大きな音を立てる
不安・焦燥 自分の状況と現実のズレに不安や焦燥をおぼえる
睡眠障害 体内時計の乱れなどによる、不眠、中途覚醒など
妄 想 物忘れと被害意識により物を盗まれたと思い込む
せん妄 意識が混濁し幻覚を見る、意味不明の言動をとる
性的異常 不適切な状況や相手への性的問題行動がみられる
人格変化 元々の性格が強くなる、あるいは変わってしまう
行動症状 多弁・多動 何時間もしゃべり続ける。じっとしていられない
暴言・暴力 周囲の人に暴言を吐く、暴力をふるう、物を壊す
失禁・弄便 トイレ以外の場所で排泄してしまう、便をいじる
徘 徊 一人で外出し無目的に歩きまわり、帰れなくなる
食行動の異常(異食・過食・拒食) 食べ物ではないものを食べる異食、必要以上の量を食べたがる過食、食べなくなる拒食など

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