適度な運動は体だけでなく心の健康にもよい

運動がダイエットや生活習慣病の予防・改善に効果があることはよく知られています。また、運動したらストレス解消になったという経験をもつ人も多いでしょう。適度の運動は、体だけでなく心の健康にもよい影響を及ぼします。

横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長の山本晴義先生の調査によると、運動習慣のある人とない人の体と心の健康状態を比較したところ、運動習慣のない人は、体にも心にも症状が起こりがちということがわかりました。運動習慣のない人の場合、精神症状(寝つきが悪い、イライラしやすい、憂うつになる、何かをするのがおっくう など)や、身体症状(背中が痛い、頭が重い、肩がこる、疲れやすい など)の自覚症状のある人が明らかに多かったのです。
このことは逆に、運動習慣をもつことが、精神的・身体的な症状の改善に役立つことが期待できます。

そのほか海外の多くの研究から、適度の運動がうつ病の患者さんによい影響を及ぼすことがわかってきました。軽度から中等度のうつ病の患者さんの症状改善や再発予防に、薬物治療と同じくらいの治療効果が認められたことも報告されています。

どうして運動が心の健康によい影響を及ぼすのでしょうか? まだはっきりとは解明されていませんが、次のことなどが関係していると考えられています。
(1)βエンドルフィン(幸福感を生み出したり痛みを和らげる脳内神経伝達物質)の産生が刺激される
(2)セロトニンやノルアドレナリン(うつ病患者の脳内で減少しているとされる脳内伝達物質)の分泌が促される
(3)交感神経の緊張が解けてよく眠れる

楽しみながら、無理なく続けることができる運動を週3回以上

心の健康のためにはどんな運動をするのがよいでしょうか? もちろん、やりたくないことをしたり無理をしたりしては心の健康には逆効果ですから、楽しみながら、無理なく続けることができる運動が適しています。自分の体力や運動経験、時間的・経済的余裕などを考慮して、自分に合うものを行うとよいでしょう。

特にうつ病の予防・改善には、リズミカルな運動がよいといわれています。一定のリズムで体を動かすことで、セロトニンの分泌が促され、うつ状態の原因となっているセロトニン不足が解消されるからだと考えられています。
リズミカルな運動には、ウオーキングやジョギング、ランニング、サイクリング、水泳、エアロビクスなどのほか、足踏みや腹式呼吸なども含まれます。

運動のやり方は、楽にできるところから始めて、慣れてきたら少しずつ強度を上げ、「ややきつい」程度の運動を1日15~30分、週3回以上行うとよいでしょう。習慣的に運動をすることは、日々蓄積した精神的ストレスのリセットにもつながります。

うつ病予防にもっともすすめられるランニング

リズミカルな運動のなかでも、うつ病予防にもっともすすめられるのは「ランニング」です。その理由として、前述の(1)~(3)に加え、「習慣化しやすいこと」、「達成感が大きいこと」があげられます。

●習慣化しやすい
定期的にランニングを行うことで、走ることによって生じる肉体的なストレスを積極的に捉え、前向きに活かしていくことができるようになります。肉体的なストレスへの適応力が高まると、精神的ストレスへの適応力も高まりますから、走ることで心も体も鍛えられます。

●達成感が大きい
レースへの参加やコースタイムなどの目標をかかげ、それに向かって練習を重ねると、目標を達成できたときの喜びは何物にもかえられません。それは大きな心の栄養となり、自信につながるでしょう。

しかし、目標達成ばかりを追い求めると、それはそれで新たなストレスにつながりかねません。心の健康のためのランニングですから、山本晴義先生考案の「心に効く走り方」を参考に、楽しんで走ってください。

<山本先生考案「心に効く走り方」>
呼吸は楽に、会話ができるペースで、笑顔で走る。そうすれば、心も体も疲れません!
・エンジョイ 仲間との会話を楽しみながらゆっくり走る
・マイペース 時間を気にせず、気持ち良さ重視で走る
・スパイス 目標タイムやペースを追いかけ、頑張って走る

(編集・制作 (株)法研)
※この記事は2013年4月に配信された記事です
山本 晴義先生

【お話を伺った人】山本 晴義先生

横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長 1972年東北大学医学部卒業。2001年より現職。医学博士。神奈川産業保健推進センター相談員、文京学院大学講師、駒沢大学講師ほか。著書に:『ストレス一日決…

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