【乳がん患者の体験談】ホルモン療法と抗がん剤、治療の選択の難しさ

山崎 多賀子さん

【執筆者】山崎 多賀子さん

美容ジャーナリスト 美容、健康に関する幅広いジャンルで長年取材を続ける。自らの乳がん体験から、各種NPO団体でのサポート活動、講演やがん患者対象のメイクセミナーにも力を注ぐ。NPO法人CNJ認定乳が…

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前向きな闘病には、納得のいく治療の選択が大切です。

乳がんは初期の段階では、自覚症状がないことが多く、私の場合も宣告を受けたその瞬間に、いきなり「乳がん患者」というレッテルを貼られてしまった、というのが正直な感想です。健康だったさっきまでの私と、今の私は一体何が違うの? と思うくらい、違う人間になってしまったような気がするのです。

がん、…まだ40代なのに、死ぬの? とまず思う。そして、すぐに死ななくても、今までと同じ生活は到底できなくなるのだろう。なんたって「がん」なんだから。と漠然と思い、見えない将来に恐怖を覚える。あまりの衝撃で悲しいという以前に思考を停止させてしまい、笑ってしまいそうになるくらい自分のこととは思えない。

しかし、数十分、あるいは数時間後には、これは夢じゃない、と否応ナシに現実に引き戻されます。

目の前の医師が私の症状を紙に書いてていねいに説明してくれているのを、現実逃避しようとする脳を必死でおさえこみ、言葉を理解しようとする。とても理解できる精神状態ではないけれど、ここで理解しないと大変だ! とまさに葛藤でした。

幸い私の検査結果は、超早期の乳がんという診断で、治ると言われました。しかし、範囲が広いので右胸は全摘出になるとも。治るなら超ラッキー、なのだろう。でも、片ほうのおっぱいがないまま、この先を生きていくなんて、想像できませんでした。

しかし、そんな私の心を安定させてくれたのは、買い込んだ医学書などから得た乳がんの知識でした。

私は、私のようにしこりにならない乳がんがあることも知らなかった。でも、先生がくれた手書きの紙を片手に、乳がん本を読み進めていくうちに、乳がんという病気のこと。自分のおかれている状況を少しずつ理解できるようになり、それとともに、冷静さを取り戻せたのです。
人は先が見えない状況に一番恐怖を覚える。悪いことでも自分の状況が分かると、次に進むべき道が見えてくるので、恐怖が和らぐのだと、以前取材した精神科医の言葉を思い出しました。確かに、私には「超早期だから死なない」という心の余裕もありました。でも早期でなくても、分からないより、分かって対策を立てるほうが精神的には安定するのだそうです。

治療の情報を集め、友人を介して乳がん経験者に話を聞かせてもらっているうちに、どんどん不安が薄れ前向きになりました。そして、乳房を失うのであれば、すぐに取り戻したいと思うようになり、同時再建を決意しました。乳首も可能であれば残したい。手術跡はできれば脇にしたい。そんな私の要望を考慮してくれる病院を探しました。手術を引き延ばして手遅れになっては大変、という限られ時間のなか、セカンドオピニオンをとり、転院し、手術を受けました。精神的に辛いけれど、ここで人任せにして後悔したくないと思いました。おかげで自分にとって納得のいく手術にのぞむことができました。

検査の段階では超早期という結果でしたが、手術後の患部を病理で調べてみると、思ったよりも進行していたことが分かりました。超早期なら、手術で治療が終わるはずでしたが、今後、転移再発する可能性がでてきたため、女性ホルモンを止めるホルモン療法と、抗がん剤をすすめられたのです。

正直いって、乳がんを宣告されたときよりも、私にとってショックでした。やっと治療が終わったと思ったら、これからもっと辛い治療をしろというのですから。

治療法は自分で選ばなければなりません。

私にとってホルモン療法も抗がん剤もどちらも絶対に嫌でした。しかし、自分の現状と再発リスクを考え、2週間かけて両方とも受け入れる決心をしました。迷いに迷い、ものすごく辛い作業でしたが、自分で納得して受けたことで、結果的に治療に自信がもてました。ただ、これは私にとってのベストであって、人それぞれに納得のいく治療の選択があります。

治療は人任せにすると、何かあったときに人のせいにしてしまい、不安がつきまとう。自分で納得できる治療を選ぶには、正しい知識が必要でした。

しかし、平常心ではいられないない患者にとって、溢れるがん情報から、正しい情報をピックアップしていくことは、大変な作業です。精神的な安定には体験者の話を聞くこと以外にも、正しい知識の提供が不可欠だと気づきました。

そこで抗がん剤が終わって落ちついたところで、NPO法人キャンサーネットジャパンが開設している乳がん体験者コーデディネーター(BEC)の養成講座で勉強をして認定をとりました。

患者はそれぞれに、とても小さな分からないことで不安になりますが、忙しい医師や看護師にいちいち聞くことができず、悶々とします。養成講座はそういう患者さんと医療者の間にたてる人を養成するのが目的です。

がんと宣告されると、2~3日パニックになる「衝動段階」になり、やがて1~2週間の「不安定段階」を経て、病気を受け入れる「適応段階」へたどりつくそうです。ところが不安定な状態から解放されず、適応障害を含む鬱になる方が3~4割いるといいます。不安定な状態から早く抜け出して前向きな治療をしていくには、正しい知識をもって治療を自分で選択していくこと。そして体験者の話を聞くことが有効だと思います。

乳がん体験者コーディネーターに相談できる場所はまだ限られていますが、これからこのような役割を担う人たちが求められていくことは、明らかです。そして、患者さんや家族が治療を乗り越えられたら、ぜひ養成講座に参加していただけたらと思います。

次回は、闘病生活を明るくする工夫についてご紹介します。

※この記事は2009年10月に配信された記事です



乳がんになりやすい人の特徴|月に一度のセルフチェックのやり方

【執筆者】岡野 匡雄先生

(財)東京都保健医療公社 東京都多摩がん検診センター副所長 昭和45年日本大学医学部卒業。内科研修後日本大学医学部病理学教室へ。昭和57年助教授となり米国へ留学。2年後日本大学へ復帰し、平成2年ま…

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(編集・制作 (株)法研

早期発見のため毎月の自己検診と定期的な乳がん検診を習慣に。毎年4万人以上の日本人女性が新たに乳がんにかかっている。壮年層の女性ではがんの死亡原因のトップ。

早期発見には検査が必要

10月は「乳がん月間」です。乳がん啓発活動のシンボルマークである「ピンクリボン」を目にしたことがある人も多いでしょう。今年も全国各地で、乳がん検診の普及促進をはじめ、さまざまな啓発活動を行うピンクリボン運動が、患者団体や行政、企業などによって行われています。

もともと乳がんは欧米の女性に多く、日本人女性にはあまり多くありませんでしたが、1980年代ごろから急増しはじめました。その後も乳がんにかかる日本人女性は増え続け、死亡者も年々増加しています。今や乳がんは日本人女性がかかる最も多いがんとなっており、毎年4万人の女性が新たに乳がんにかかっていると推計されています。

多くのがんは60歳すぎから急増しますが、乳がんの場合は20代後半から増えはじめ、最も多いのが40代、50代で、60代、70代、30代と続きます。30~64歳の壮年層の女性では、がんの死亡原因のトップが乳がんですから、働き盛りの女性にとって、乳がんは最も危険ながんといえます。

ほかのがんと同じように、乳がんも早期発見、早期治療が大切です。早期に発見できれば治る確率が高く、幅広い治療法が選択でき、治療後の経過もよいのです。
乳がんは硬いしこりをつくるものが多いため、早期のうちに自分で触って気づくことができる唯一のがんですが、何気なくふれて気づいたような場合は進行していることが多いのも事実。しこりが小さい早期に発見するためには、正しいチェック方法で毎月自己検診を行うことと、定期的に乳がん検診を受けることが必要です。

乳がんになりやすい人の特徴|月に一度のセルフチェックのやり方

しこりがわかる前に発見できるマンモグラフィ検査と超音波検査

しこりが2cm以下で転移もない状態で発見して治療すれば、10年生存率は約90%、それより早く、しこりとしてふれない段階に発見できれば約95%、つまりほとんど完治できるといえます。この、しこりとしてふれない乳がんを発見するのに役立つのが、マンモグラフィ検査と超音波(エコー)検査です。

マンモグラフィとは乳房専用のX線撮影のことで、視触診ではわからない小さながんだけでなく、しこりになる前の「微小石灰化」というごく初期にみられる病変も見つけることが可能です。乳房はそのまま写すと乳腺などの組織が重なって写ってしまうため、マンモグラフィ検査では透明なプラスティックの板で乳房をはさんで圧迫し、薄く引き伸ばして撮影します。圧迫により痛むこともありますが、緊張すると余計に痛みを感じやすいので、できるだけリラックスして受けるとよいでしょう。

欧米ではマンモグラフィによる乳がん検診の普及によって早期に発見されるがんが増え、死亡率も低下しています。日本では2000年から自治体の乳がん検診に導入され、40代と50歳以上の女性の「視触診とマンモグラフィの併用」は、有効性が高いことが証明されています(厚生労働省「がん検診の有効性評価」)。

超音波検査は、あまり小さい石灰化は、時に見つけることができませんが、指ではふれない数ミリ程度のしこりをみつけることができ、X線を使用しないため妊娠中でも検査が可能です。また、若い人や乳腺が発達した人の場合は、マンモグラフィよりも効果が高い場合もあります。

乳がんの危険因子をもつ人は早めに検診を

市区町村で行われる乳がん検診の場合、対象は40歳以上で2年に1回が目安ですが、自治体によって異なる場合もあるので、問い合わせてみるとよいでしょう。職場で受ける場合も実施状況は職場ごとに異なります。

乳がんは誰でもかかる可能性がある病気ですが、次のような場合はとくにかかりやすいといわれています。一つでも当てはまる人は、できれば30歳代から自主的に乳がん検診を受けましょう。

●近親者(とくに母、姉妹)に乳がんになった人がいる
●妊娠・出産・授乳の経験がない、または高齢出産である
●初潮年齢が早く、閉経年齢が遅い
●乳房が大きい
●肥満している(BMI:25以上)

自己検診は20歳代から習慣づけたいものです。月経5日目ごろから1週間以内に行うのがよく、閉経後の人は自分で日を決めて、毎月1回行いましょう。

(1)鏡で見て左右の乳房の形の違いやゆがみ、ひきつれ、乳首のへこみやただれなどがないかチェック。腕を上げた状態と下げた状態で行う。
(2)調べる乳房と反対側の手の指をそろえ、指のはらをすべらせるように、乳房の外から内に向かって全体を軽く触れていく。鎖骨の下からわきの下までまんべんなくチェック。入浴中、手に石けんをつけて行うと小さなしこりにも気づきやすい。乳房の大きい人はあお向けに寝て行うとよい。
(3)乳房や乳首を軽く絞り、分泌物が出ないかチェック。

もしも気になる異常を見つけたら、自己判断せず、すぐに乳腺科か乳腺外科を受診しましょう。

(「すこやかファミリー」法研より)

※この記事は2008年10月に配信された記事です

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【乳がん患者の体験談】抗がん剤で脱毛して外見が激変…でも綺麗でいたい

山崎 多賀子さん

【執筆者】山崎 多賀子さん

美容ジャーナリスト 美容、健康に関する幅広いジャンルで長年取材を続ける。自らの乳がん体験から、各種NPO団体でのサポート活動、講演やがん患者対象のメイクセミナーにも力を注ぐ。NPO法人CNJ認定乳が…

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病気との付き合い方、私の場合。人ごとではないから知って欲しい乳がんになること。

乳がんの治療は、局所治療と全身治療の二つに分けられます。

患部を摘出する手術や、術後に取り残したがん細胞をやっつけるために乳房に当てる放射線治療は、部分的なものなので、局所治療とよばれます。
また、がん細胞が血液やリンパの流れにのって全身を巡っている可能性がある場合は、点滴や注射、飲み薬によるホルモン療法や抗がん剤、新しいところでは分子標的薬があり、これらは全身に作用させるので全身治療とよばれます。

術後の痛みや、乳房や乳首を失ったり、形が大きく変形したときの喪失感は、人によって性格を変えてしまうほどの影響を与えることもあります。また女性ホルモンの分泌を抑えるホルモン療法では、更年期と同じさまざまな不調がでてきます。しかし、なかでも辛いのは、抗がん剤治療ではないでしょうか。

抗がん剤は、吐き気や胃腸の不調、しびれ、味覚障害など、個人差はあるものの身体的に辛い副作用を伴いますが、そこへ追い打ちをかけるのが、外見をガラリと変えてしまう脱毛です。健康な細胞にも強いダメージを与える、標準治療の抗がん剤では、ほぼ完全脱毛してしまいます。それも頭髪だけでなく、眉もまつ毛も鼻毛も抜けてしまい、くすみやむくみ、肌荒れがおこり、まさに「重病人」の風貌になってしまうのです。

ニキビができるだけで、人に見られたくないと思うのが女性の心理ですから、想像するだけで耐えられない、と思うものです。
私も抗がん剤の選択を迷ったときに、そんな姿を人に見られたくない。おっぱいは服を着れば分からないけれど、顔は隠せない。抗がん剤をしたら、仕事も楽しいこともすべてあきらめて、引きこもっているしかない。そう思うと絶望的になりました。

皆さんは、がんというと、病院で寝たきりのイメージがあるかもしれませんが、実際はそうとも限りません。

乳がんの場合、手術で3日から長くて2週間日の入院。手術以外の治療はすべて通院が一般的です。いっそ入院しているなら病院に守られているし、患者だらけなので外見もそう気にならない。でも実際の闘病の場は、普段の生活の場なのです。病院の外では自分で自分を守らないといけないからこそ、孤独という恐怖を感じるのです。

ところが、医師や経験者の話を聞き回ってみると、抗がん剤の治療中、ずっと具合が悪いわけではないことが分かりました。確かに、薬を点滴した数日間は吐き気などの副作用がでるので、安静にしていたほうがいいけれど、それ以外は案外、普通の生活ができるというのです。

このことが分かり、やっと恐怖から解放されました。
「元気な日があるのなら、オシャレなウィッグを作ろう。流行の帽子を用意しよう。どうせなら今以上にオシャレになってやろうじゃないの! 病気だからって、ひと目を気にしてこそこそ生活するなんて、まっぴらごめん! 具合が悪い日は病人だけれど、元気なときは普通の人に戻ろう!」そう思ったら、ムクムクと力が沸いてきたのです。

そして抗がん剤が始まる前に、希望どおりのオシャレなウィッグやつけ毛、帽子を準備できたときに、大丈夫だと思えました。「脱毛どんと来い!」と思えたのです。

髪はもちろん、病人風の顔も、元気に見えるメイクで克服できました。メイクして、ウィッグや帽子をかぶった私の姿は、我ながらとても抗がん剤中とは思えませんでした。すると不思議なことに、そんな姿を人に見てもらいたくなるので、体調がいいときは、積極的に仕事や遊びに出るようになりました。なんと、趣味のバレーボールも帽子をかぶって参加したほどです。

治療は医師に任せる。でも外見をキレイにすることは自分でできる。

女性にとって外見が心に与える影響の大きさと、外見を整えることの大切さを、この経験から改めて学びました。そしてこれはなにも、がんに限らずの話だと思いました。辛く、具合が悪いときは、外見など気にする必要はありません。でも、元気なときは、外見を整えてやると、自分のモチベーションが上がるのです。再び社会とつながりたくなるのです。身体力、気力、知識、経験はすべて、困難を乗り越えていく「力」になります。同じようにキレイも「力」、なのだと私は思っています。

自分の経験から、元気に見える簡単なメイク法を著書や講演会などで、機会があるごとにご紹介させていただいており、私が所属するNPO法人キャンサーリボンズが運営する、新百合ヶ丘駅(神奈川県・新百合ヶ丘)のリボンズハウスでも、定期的に小さな美容セミナーも開いていますので、もし機会があったら、のぞいてみてくださいね。健康な方も大歓迎です。

最後にひとつ、医療用ウィッグについてです。実は医療用のウィッグは、どんなに安くても10万円前後します(私は2種類買って、40万円以上しました)。製造にとても手間がかかるため、高額なのは仕方がないのですが、抗がん剤治療が高額な上に手痛い出費。もちろん買えずにあきらめる人も少なくないのが現状です。
残念ながら日本では医療用ウィッグに保険適用が認められていませんが、ファッション用のウィッグは患者用にできていないので、不具合が多いのです。髪はあればいいってももではない。不自然なヘアスタイルで人に会いたくなくなるものです。現在NPOで抗がん剤を受ける患者さんに医療用のウィッグを贈る活動をしていますので、皆さんにも、ぜひそんな現状を知って頂けたら嬉しいです。

関連コラム
●第一回 【乳がん患者の体験談】告知のショックーまさか自分が乳がんになるなんて

●第二回 【乳がん患者の体験談】ホルモン療法と抗がん剤、治療の選択の難しさ

※この記事は2009年10月に配信された記事です

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【乳がん患者の体験談】告知のショックーまさか自分が乳がんになるなんて

山崎 多賀子さん

【執筆者】山崎 多賀子さん

美容ジャーナリスト 美容、健康に関する幅広いジャンルで長年取材を続ける。自らの乳がん体験から、各種NPO団体でのサポート活動、講演やがん患者対象のメイクセミナーにも力を注ぐ。NPO法人CNJ認定乳が…

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人ごとではないから知ってほしい 乳がんになるということ。

乳がんになって思い知らされた検診が必要な本当の理由

今年もピンクリボン運動月間が始まり、さまざまな場所でイベントが繰り広げられています。ただ、この運動を季節の風物詩かなにかで、自分自身に向けられたメッセージとは思っていない女性も多いようです。そこで乳がんの体験者として声を大にして言います。乳がんは女性の誰もがかかる可能性があり、しかも予防ができない病気です。ピンクリボン運動とは、「乳がんを早く発見し、寿命まで幸せな人生を送るために、皆さん乳がん検診にいってください」、と呼びかけるための運動だということを。

とはいえ、健康だと思っている人のほとんどは、自分が乳がんになる、などと思わないものです。何を隠そう私はその代表選手のようなものでした。忙しいし、予約するのは面倒だし、検診代も高いし。だいいち体が丈夫な私が40代でがんなどという怖い病気になるはずがない。そう思って疑いませんでした。ところが、これまで検診をさぼっていた私は、本当にラッキーな偶然により、乳がんを見つけることができたのです。検診で命拾いをした、と心の底から思います。

そこでまず、私が乳がんを発見した経緯を書きたいと思います。

私は4年前、44歳の夏、子宮を調べておこうと、婦人科へ検診に行ったのです。理由は近い将来の更年期に備え、今のうちに子宮や卵巣を調べておこう。そして信頼できる婦人科の主治医を見つけておきたい、と考えたからです。若いころから生理が重かったので、いつか大きな病気をするとしたら、きっと婦人科系だろうと決めつけていたため、乳がんについてはまったくノーマークでした。

ところが私が選んで行ったクリニックは、初診時に婦人科の他にマンモグラフィを含む乳がん検診も必ず受けるシステムになっていました。なので、私はついでのつもりでマンモグラフィを受けました。乳がん検診は実に10年ぶりでした。

その結果、婦人科系は問題なし。ところがマンモグラフィでひっかかってしまったのです。とはいえ触ってもしこりはないし、乳腺症の疑いかな? と、このときは気楽に構えていました。

クリニックで見せられた私のマンモグラフィの画像には、右乳房だけに塩をまいたような白いツブツブがたくさん映っていて、これを石灰化といい、ほとんどが良性のものだが、なかには乳がんが隠れている場合があるということでした。そして3度の検査の結果、乳がんと診断されてしまったのです。痛くも痒くもないのに、この瞬間から私は乳がん患者になったのです。どれだけ触っても、しこりらしきものも感じられないのに!なぜ!? なんと私の乳がんは、しこりにならず、がん細胞が乳管の中をじわじわ這うように増殖していたのです。このようなタイプは、触診ではまず見つけることは不可能で、超音波にも映らない。超早期の石灰化も映し出す、マンモグラフィでなければ見つからないものでした。

告知を受けたときは頭が真っ白になり、床がスッと抜け落ち、椅子ごと底へ落ちていくようでした。

しかし、あのとき検診を受けに行っていなければ、今も私は乳がんと知らずにのうのうと生活していた可能性があります。そして、自分で気づいたときは病状が進んでいて、私は本来の寿命を全うできなかっただろうと思うと、怖しくなります。
乳がんでおっぱいがなくなっても人は死にません。乳がんで死亡するのは、他の臓器に転移再発してしまうからです。そして再発すると完治は困難と言われています。乳がんは早く見つけるほど、完治の確立が高いことが分かっています。乳がんになるのを止めることはできない。ならば、乳がんになっても早く見つけて、早く治すことが最大の防衛策です。それには、定期的に乳がん検診を受けて、手で触っても分からないくらいの段階で見つけることがとても大切なのです。

進行がゆっくりの乳がんは、1cmのしこりになるのに、約10年かかるといわれています。でも1cmから2cmになるのは、わりとすぐなのだそうです。私の乳がんも広がりかたをみるとおそらく10年前には始まっていたと言われました。なんのことはない。私は34歳のときにすでに乳がんだったのです。

私は本当にラッキーだった。でも私のように乳がんにならないと信じて検診に行かずにいて、でも実はすでに乳がんという人が世の中にはたくさんいます。それはあなたかもしれないし、あなたの大切な人かもしれない。

日本の乳がんでの年間死亡者数は交通事故死よりもずっと多い事、そして乳がんにかかる人も死亡する人も年々増えていることをご存知でしたか? その恐ろしい現実をもう一度自分のこととして、考えてほしいと思います。

結果的に私は右乳房を全摘出し、再建をしました。当初、超早期と言われていた乳がんは思ったよりも進行していて、再発を防ぐために抗がん剤治療を受け、吐き気や脱毛などの副作用を経験し、現在は女性ホルモンを抑えるホルモン療法を続けています。治療を受けたことに後悔はありませんが、もっと早くから乳がん検診にいっていたら、抗がん剤を受けなくてもすんだかもしれなかったのに、と思わずにはいられません。早く見つければ、治療も軽くすむ可能性が高いのです。

次回は、万が一乳がんになってしまったときの、治療について書きたいと思います。

※この記事は2009年9月に配信された記事です

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乳がんリスクを『ほぼ確実』高める行為とは?|乳がんの予防と治療の新常識

選択肢が広がる乳がん治療 早期発見がより重要に。
最近20年で乳がん医療は大きく進歩。乳がんのなりやすさや、乳房温存治療など、乳がんの最新情報を紹介。

乳がんの予防と治療の新常識ー乳がんリスクを『ほぼ確実』高める行為とは?

乳房温存療法が世界標準に

日本女性の11人に1人がかかる乳がん。乳がんにかかる女性は増加しており、1年間に1万4000人の人が乳がんで亡くなっています(2016年の統計による)。
その一方で、乳がん医療は大きく進歩。例えば、以前は、乳がんになったら乳房全体を切らなければならないと言われていましたが、乳房全体を切除しても、がん細胞とその周囲だけを小さく切っても、治療後の余命には変わりがないとする報告が相次いだため、現在では乳房を残す温存療法が世界標準になっています。乳がんになったら即、胸を失う、ということにはならなくなりました。

欧米では遺伝性乳がんの予防的切除も

ハリウッドの人気女優、アンジェリーナ・ジョリーさんが乳がん予防のために乳房を切除したことは記憶に新しいでしょう。アンジーが乳房切除に踏み切ったのは、遺伝子検査によって乳がんに関係する遺伝子の異変が見つかったからで、この手術により、彼女の乳がんリスクは87%から5%になったと言われています。遺伝子検査で乳がんの発症リスクがわかり、乳房切除手術で発症リスクが下げられるなど、以前は考えられないことでした。欧米では遺伝性乳がんの研究が進み、手術には多くの場合、保険も適用されます。

乳がんリスクを高める生活習慣に注意

遺伝子が原因の乳がんは、乳がん全体の5~10%と言われており、それ以外の乳がんの原因はよくわかっていません。これまで欧米を中心に、食事などさまざまな生活習慣と乳がんとの関連が研究されてきましたが、乳がんは発症するまで20年、30年とかかるため、生活習慣との関連を検証するのは難しいのが現状。ただ、その中でも「乳がんリスクを増加させる」ことがわかっているものを避け、「乳がんリスクを減少させる」可能性があるとわかっているものを取り入れることは、乳がん予防につながると考えられます。

飲酒と喫煙は「ほぼ確実」に乳がんリスクを増加

「乳癌診療ガイドライン2013」(日本乳癌学会編)で紹介されている、国際的なリスク評価によると、乳がんリスクを「ほぼ確実に増加させる」とされているのは、アルコールとタバコ。また、乳がんにかかりにくくなる「可能性がある」とされているのは、大豆イソフラボンと乳製品の摂取です。一方、高脂肪食品の摂取や、ストレス、電磁波など、乳がんリスクを増加させると言われているものは、今のところ「証拠不十分」。バランスのよい食事が大切であることは言うまでもありません。

閉経後は運動をして、太らないように注意!

運動や肥満との関係で言えば、閉経前の運動が乳がんリスクを下げるかについては「証拠不十分」。一方、閉経後の運動は「ほぼ確実」に乳がんリスクを下げると言われています。閉経後の肥満は乳がんにかかりやすくなることも「ほぼ確実」なので、閉経後は運動をして、太らないように気を付けることが大切と言えます。

早期発見・早期治療が最も重要

乳がんは早期に発見できれば約9割は治る病気です。また、早期であれば見た目を重視した治療など、選択の幅が広がります。月1回の自己検診と、40歳以上はマンモグラフィ、30代で気になる人はエコー(超音波)による検診を受けるようにしましょう。自己検診で異変を発見したら、婦人科ではなく乳腺外科を受診します。

(編集・制作 (株)からだにいいこと)

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乳がんのセルフチェックの仕方-自己検診で乳がんを早期発見

福田 護先生

【お話を伺った人】福田 護先生

聖マリアンナ医科大学附属研究所 ブレスト&イメージング先端医療センター附属クリニック院長 1969年金沢大学医学部卒業後、国立がんセンターを経て74年に聖マリアンナ医科大学第一外科助手に。米国Me…

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通常の状態をしっかり感じ、知っておくことが大事。
20歳になったら毎月1回自己検診を。気になる異常を見つけたら、自己判断せずすぐに受診しよう。

毎月1回自己検診を続け、異常があれば乳腺外来で検査してもらおう

乳がんは自分で見て触って、かなり初期のうちに発見することができるがんです。これは、進行して自覚症状が出るまで気づきにくいほかのがんにはない利点。この利点を活かすには、定期的に自己検診を行うことが決め手です。ぜひ正しい自己検診の方法を身につけ、そして実行してください。

20歳になったら、月に1度の自己検診を習慣づけましょう。検診に適しているのは、月経が始まって5日目から1週間くらいまで。この時期は乳房がやわらかく安定しているので、しこりがわかりやすいのです。月経がない人は毎月1回、日を決めて行いましょう。
自己検診を行っていくうち、自分のいつもの乳房の状態がわかってくると、何かしらの異常が生じたとき、「何かいつもと違う感じ」がわかるようになります。乳房の表面にできる乳がんは、注意深く触れば、1~2cmほどの大きさになるとわかりますし、がんによる皮膚のひきつれやくぼみなどにも気づくことができます。初めは、慣れるまで毎日でも自己検診を行い、自分の乳房のいつもの状態がどんな感じなのか、しっかり感じて、知っておくことが大切です。

自己検診でいつもと違う何かを見つけたときは、すぐに乳腺外科や乳腺内分泌外科などを標榜している乳腺外来を受診し、検査をしてもらいましょう。乳がんは、早期に発見して適切な治療をすれば9割以上が完治するといわれています。「これはたぶん良性」などと自己判断したり、怖いからと受診をためらったりしているうちにがんが進行してしまったら大変です。

乳がんの自己検診の方法

●鏡で見ながらチェック
乳房の自然な曲線に微妙な乱れ(引きつれ、くぼみ、ふくらみ、ただれなど)がないか、チェックしましょう。

(1)鏡の前にリラックスして立ち、乳房の大きさ、形、色、乳頭のただれなどの変化がないか、よく観察しましょう。両腕を下ろしたり、腰に当てたり、頭の後ろで組んだりしながら左右で違うところはないか、いつもと違うところはないかチェックします。

(2)バンザイをすると乳房の奥の大胸筋が緊張して乳房が平たくなり、形の変化がよくわかります。また、前かがみになったり後ろにそったり、横を向いたりして、いろいろな方向から乳房を観察しましょう。

●指で触ってチェック
入浴時に石けんをつけた指で触ると、小さなしこりまで見つけやすくなります。乳房から脇の下にかけてくまなく触り、しこりや部分的に硬いところがないかチェックしましょう。

(1)親指以外の4本の指を軽くそろえ、指の腹(指先に近い部分)で乳房を押しぎみに(強く押さない)、場所を少しずつ移動しながら触ります。このほかに親指とあとの4本の指でそっとはさむ、手のひらで押す、人差し指と中指でキーボードをたたくようにしてさわるなどすると、別の感覚で異常をとらえることができます。

(2)しこりの調べ方は、次の「渦巻き式」や「平行線式」を用いると、くまなく触診することができます。

渦巻き式 親指以外の4本の指を軽くそろえ、10円玉大の「の」の字を描くように指の腹をすべらせます。乳頭周辺から乳房の外側に向って渦巻き状に触れ、しこりやひっかかりがないかチェックします。押す強さを何段階か変え、脇の下まで触りましょう。

平行線式 親指以外の4本の指を軽くそろえ、横方向と縦方向に平行線をひくようにすべらせチェックします。

*(1)と(2)は、就寝前にあおむけになって行ってもよいでしょう。

(3)最後に、乳房や乳首を絞るようにして、乳首から分泌物が出ないかチェックします。血液混じりの分泌物が出たときは、すぐに乳腺外来を受診してください。

(編集・制作 (株)法研)
※この記事は2012年10月に配信された記事です

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