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妊娠・出産は人生の大きな節目。だからこそ、多くの女性は準備を怠りません。「妊活」から始まり、懐妊後は呼吸法など出産に向けて勉強が続きます。しかし、産後のことはどうでしょう。赤ちゃんではなく、自分に対する産後支度。「とりあえず、産んだら何とかなるだろう」と思ってはいませんか。

そんな状況に警鐘を鳴らしているのが吉田紫磨子さん(44)。4姉妹の母で、自身の産褥期体験を綴った『産褥記 産んだらなんとかなりませんから!』(KADOKAWA)を2015年4月に上梓。産後女性の健康のために活動するNPO法人マドレボニータ(吉岡マコ代表)の認定産後セルフケアインストラクターとして、産後ケアの啓発に取り組んでいます。

「生傷」があるのに体を休ませないという矛盾

吉田さんは、産後の女性について「体の中に傷がある状態」と表現します。出産によって、赤ちゃんとお母さんがつながっていた胎盤が子宮から剥がれ落ちるからです。その傷からおよそ1か月にわたって悪露(おろ)と呼ばれる出血もあります。

「にもかかわらず、産後の養生は見過ごされています。傷がおなかの内側にあるためダメージがわかりにくいこと、それに、産後女性はホルモンのバランスが急激に変化するなどして“正気じゃない”状態となり、本人が大丈夫だと錯覚してしまうことが原因です。社会的にも『出産は病気じゃない』と過信されていて、行政による産前学級などでもほとんど触れられていません」

産後に起こる三つのクライシス

では、産後の養生を怠るとどうなるのでしょう。吉田さんによると、心身に不調が現れ三つの重大な問題が起きやすくなります。

産後うつ
「産後女性の10人に1人が産後うつという統計があります。ただ、年間およそ500人の産後女性に接する私の経験からは、それ以上に思えます。マドレボニータが行った調査でも、受診はしなかったものの『あれは産後うつだった』と振り返っている人を含めると、経験者は実に10人中8人にのぼっています」

乳児の危機
「虐待された乳幼児の44%が0歳児で、その加害者の6割以上が実母という統計があります。つまり、虐待をしてしまった母親たちは産後のダメージを受けた状態だったのです。決して一部の『鬼母』の仕業ではありません」

夫婦の危機
「出産後に、主に妻の夫への愛情が低下する状態です。離婚ケースの3割が、子供が0~1歳のうちになされているという統計があります。産後すぐから約2年間です。はたから見ると幸せの時期ですが、実は夫婦間でこのような深刻な問題も起きています」

育児休暇取得よりやってほしい、夫が今すぐできる準備

このように問題を抱えがちな産後。それを乗り切るキーパーソンは夫、と吉田さんは断言します。男性の体は女性と異なり出産に伴う変化がありません。父性が芽生えにくい原因ともいわれますが、“正気でない”妻に代わって冷静でいられるのは好都合。夫は妻が体を休ませられるよう生活を整えることができるのです。

「産後女性のケアや家事のサポートサービスを、育児の初期投資と考えて上手に取り入れること。これにより産後の回復を充実させ、心身共に健やかな育児をスタートさせることができます。『育休を1か月とってその後は残業続き』というよりも、産前にサポート計画を立て、申込みまで済ませておくことが、夫としてできる何よりの準備です」

吉田さんが講師を務め、産後サポートのプラン作りなどを紹介するイベント「みんなで学ぶ産後のこと~産後のカラダ・ココロ・パートナーシップ」が2015年7月18日(土)、東京都江東区で開かれます。吉田さんは、東京以外での啓発活動にも力を入れていて、「女性本人だけでなく、夫やその両親などにも参加していただき、産後について理解を深めてほしい。産後ケアの文化を全国に広げていきたいです」と話しています。

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産褥記 産んだらなんとかなりませんから!』(吉田紫磨子・吉岡マコ著 KADOKAWA)