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発達障害と同時に現れる症状の詳細(知的障害、てんかん・脳波異常、運動機能の障害など)
出典:株式会社法研「子どもの発達障害 家族応援ブック」
著者:高貝 就 浜松医科大学 子どものこころの発達研究センター特任准教授
広汎性発達障害には、知的障害、てんかん・脳波異常、運動機能の障害が同時にあらわれることもあります。これを随伴症状(ずい はん しょう じょう)といいます。自閉症の随伴症状は、知的障害やてんかん・脳波異常が多いのですが、高機能自閉症やアスペルガー症候群では知的障害の合併(がっ ぺい)はありません。また、てんかんの合併も自閉症に比べると少ないです。
知的障害
知的障害は、IQが70未満の状態をいいます。IQは知能検査で測定します。症状の重さは以下のように分かれています。そして知能検査にはさまざまな方式がありますが、児童精神科でよく用いられるのは以下のものです。
①新版K式発達検査(測定対象の範囲は0歳~14歳。ただしこの検査は「発達検査」なのでIQではなく発達指数のDQで評価されます)
②田中ビネー検査(測定範囲は2歳~成人)
③ウェクスラー児童用知能検査(測定範囲は5歳~16歳11カ月)
このうち、ウェクスラー児童用知能検査は、高機能自閉症やアスペルガー症候群の診断や、学校生活などでの教育上の配慮を検討するための材料として用いられています。検査項目は、言語理解、知覚推理、ワーキングメモリー、処理速度などに分かれていて、知識、語彙(ご い)、理解(社会経験)、算数、類似(抽象的思考)、数唱(短期記憶力)といった言語能力を評価するもの、絵画配列、絵画完成、積木模様、行列推理、符号、記号探し、組みあわせなどの情報を関連づけてまとめていく力や処理速度を評価するものなどの下位項目で構成されています。
IQで高い数字が出ても、下位項目の凸凹(でこ ぼこ)が大きい場合は、そのIQ通りの知的能力をフルに発揮できません。また、バラツキが大きいこと自体が知的能力の発達の凸凹をあらわしていて、広汎性発達障害の診断を下す有力な資料となります。
●IQとはIntelligence Quotientの略で、知能検査の結果を表す数値。「生活年齢と精神(知能)年齢の比」を基準とした数値で、100が同じ年齢の集団の中心になるように設定されている。
●発達の凸凹「発達障害」は英語ではdevelopmental disorderで、disは乱れ、orderは秩序なので、「発達の道筋の乱れ」あるいは「発達の凸凹」を意味するという考え方。浜松医科大学の杉山登志郎先生が、「発達障害」のことを「発達凸凹」+「適応障害」だと提唱している。
てんかん
てんかんは、脳の電気的な活動のリズムの乱れが原因でけいれんや意識を失う発作が続き、発作を抑えるための治療が必要な状態をいいます。
乳幼児期にてんかん発作をくり返すことで、脳神経の発達へのダメージが生じ、知的障害につながることがあります。また発作を起こして転倒すると、頭部などのケガの危険がありますので、てんかんが疑わしい場合には、早めにてんかんを専門としている小児科医などを受診してください。
運動機能の障害
運動能力が年齢に追いつかないケースです。小学校に入学してから、鉄棒や球技が極端に苦手なことや、手先が器用でないために、靴ひもを結んだり鉛筆で字を書くことがうまくできないことなどで明らかになります。また、こうした子どものなかには、姿勢を正してじっと座っていられない子どもがいますが、これはお腹や腰の筋肉のバランスの悪さが原因といわれています。
発達障害と同時にあらわれやすいのは
知的障害、てんかん・脳波異常、運動機能の障害。
ただし広汎性発達障害に知的障害はほとんど見られない。