提供:gooヘルスケア
出典:株式会社法研「子どもの発達障害 家族応援ブック」
著者:高貝 就 浜松医科大学 子どものこころの発達研究センター特任准教授
適切なケア、診断後の関わり方が大切
医師から診断結果を告げられて、子どもの障害をすんなりと受け止めることができる親御さんは少ないと思います。そのため、私は診断の際、親御さんの不安を和らげることを常に念頭において接しています。親御さんの精神的安定、それが子どものケアにもつながるからです。
診察室では個々の発達の特性について説明し、質問に丁寧にお答えしながら、不安な気持ちを受け止められるように配慮しています。それでも、「最初は頭のなかが真っ白になっていて、先生の説明が耳に入らなかった」と語る方も多くいらっしゃいます。
障害告知がその子の全人格を否定するようなものであってはなりません。発達障害といってもすべての側面で遅れがあるのではなく、むしろ一般の子どもよりも優れた特性を有していることもめずらしくありません。診察や検査の結果からは、子どもの優れた点や、成長の可能性も読みとれます。大切なのは、診断後の関わり方次第で子どもの成長に大きな違いがあるということです。親御さんにはこの部分をしっかりと説明するように私は努めています。
ですから、診断を告げられるということは悪いことばかりではないのです。診断は適切なケアを開始するための第一歩です。診断名を踏まえ、これからどのようなサポートを、どのような方法でお子さんが受けていけばいいのか、考えていくために必要な情報だと思ってください。
発達障害者支援法が公布されて以降、医療および相談の窓口といった発達障害児支援のための資源は、昔に比べてかなり整ってきています。道に迷ったら人にたずねたほうが早いのと同じように、子どもへの接し方などで困ったら、親御さんだけで悩むよりも、専門家に相談することを考えてみてください。
「三人寄れば文殊(もん じゅ)の知恵」と言いますが、行政、学校、医療が連携し、子どもや親御さんの不安やつらさを支えることができると思います。ぜひ、ためらわずに最寄りの相談機関、医療機関を訪ねてください。また、家族の自助的な団体もあります。親御さん同士のネットワークは、当事者でなければわかりにくい悩みや苦しみを乗り切るために、とても重要な役割をもっています。
●発達障害者支援法とは
平成16年4月に施行。症状が低年齢に発現する発達障害に対し、早期発見、早期療育、教育、就労、地域生活に必要な支援と、家族への助言、発達障害の啓発、都道府県の支援センター設置など、自立と社会参加の援助について、国や自治体の責務を規定した法律。