201504_01_400

2人に1人ががんにかかり、3人に1人ががんで亡くなる時代。「がん」は日本人の死因第一位ですが、がんの死亡を防ぐには早期発見・早期治療がもっとも有効だといわれています。そこで、九州大学の研究グループは「がん患者の尿の匂いに線虫が反応する」ことを発見。実用化へ向けた研究を進めています。

がん撲滅の第一歩は早期発見・早期治療

がんの早期発見に役立つ医療技術が進歩し、ほんの小さながんでも見つけられるようになりました。しかし、そういった検査は、大きな病院に行かなければいけないうえに、結果が出るまで何日もかかるなど、「気軽に受診」とはほど遠いのが現状。また、がんの種類別に検査を受ける必要があり、金銭的な負担もあります。そのせいで発見が遅れてしまうこともあるでしょう。

がんを早期に発見するには、もっと手軽で、安く、確実に、がんを診断できる方法が不可欠です。

がんの匂いに線虫が集まる?

そこで研究対象となったのが「匂い」です。以前から、がん患者には特有の「匂い」があることが知られていて、嗅覚の優れたイヌを使った研究がされていました。しかし、イヌの集中力によって精度が安定しないこと、1日に数人分しか調べられないなど、実用面での課題がいくつもあります。

九州大学の研究グループは、イヌと同等の嗅覚を持つとされる「線虫」に着目。線虫を使って調べたところ、高精度にがんを判別することがわかったのです。

201504_01_300

線虫 撮影:Scot Nelson

線虫とは体長1ミリ程度の生物。一般には寄生虫のイメージが強いと思いますが、実は種類がかなり豊富で、個体数では動物界でもっとも多いと言われています。そんな線虫ががんの診断に役立つとあって、かなり話題となりました。

しかも、検査に必要なのは尿1滴だけ。検査費用は数百円で済むというお手軽さ!

安くて、手軽で、高精度と、理想的な検査

今回の研究では「C. elegans」という線虫を使い、がんを見分けられるかどうかを調べました。がん患者24人と健康な人218人の尿を使った実験では、23人のがん患者の尿に集まり、207人の健康な人の尿では逃げる行動を見せました。その精度は95%以上と、血液で行われる腫瘍マーカーよりも高精度だったのです。がん患者のなかには早期がんの人もいましたが、それも陽性と出ました。

線虫でがん診断ができるメリットを、以下に簡単にまとめました。

①尿1滴でいいので、血液検査のように痛みがない。
②線虫は飼育が簡単で、検査費用は数百円程度で済む。
③匂いごとの反応(近寄ったり、逃げたり)が識別しやすい。
③さまざまな種類のがんを一度に調べられる。
③診断結果が出るまで1時間半程度と早い。
④ステージ0やⅠの早期がんでも検出できる。
⑤感度95%以上と高精度。

実用化にはさらなる精度の安定が必要ですし、検査機器の開発など、いくつかのハードルがあります。しかし、国内メーカーと協力して、より簡単に検査ができるシステムの開発がはじまりつつあるようです。また、今は「がんの有無」しかわかりませんが、将来的にはがんの種類まで特定できる可能性があるとか。

この検査が普及することで、日本だけでなく、世界中のがん患者が激減する日が来るかもしれません。

九州大学プレスリリース(尿 1 滴で短時間・安価・高精度に早期がんを診断!)