立ちくらみは俗に脳貧血といわれるが、貧血とは別のもの。
「貧血」は血液中の赤血球が少なくなる病気。一過性の血圧低下による「脳貧血」との違いについて解説します。

立ちくらみがあったら貧血?

立ちくらみは、血圧の一時的な低下による脳の血流不足

急に立ち上がった時、長時間立っていた時などに目の前が真っ暗になったり、一瞬意識を失ったり(失神)する「立ちくらみ」。これはいったいどのような状態なのでしょうか。
立ちくらみは、一時的に血圧が低下することによって脳が血流不足になることでおこります。体の中、特に脳を流れる血液はいつも安定した流れが保たれるように、自律神経がうまくコントロールしています。そのため、普通であれば急に立ち上がった時でも脳の血流が急に減るようなことはありませんが、自律神経がうまく働かないと、起立した時に一瞬血圧が低下して「脳貧血」が起こります(起立性低血圧)。

痛みや精神的緊張、咳などをきっかけに起こることも

起立性低血圧は思春期にもよく認められ、普通は心配いりませんが、高齢者では転倒の原因となることもあり注意が必要です。中には薬剤や糖尿病などによる自律神経障害、脱水や出血が原因になっていることもあります。
また、痛みや精神的緊張などをきっかけに、自律神経の反射で血管が拡がったために血圧が下がり、「脳貧血」が起こる場合もあります(神経調節性失神)。強い痛みや、採血などの医療行為の際、また、ひどく緊張した時などに起こりやすく、咳や排尿・排便もきっかけになります。多くの場合心配いりませんが、失神の中には心臓などに原因があり命にかかわるものもありますので、きちんと診断を受ける必要があります。

貧血は血液中の赤血球が少なくなる病気で「立ちくらみ」とは別

「よく立ちくらみをするのですが、貧血でしょうか」と言う人がいます。確かに貧血では脳貧血のような症状も起こりやすいため、誤解されやすいのでしょうが、立ちくらみがあったら貧血というわけではありません。
貧血とは、血液中の赤血球(正確には赤血球に含まれるヘモグロビン)が少なくなる病気で、体に十分酸素が運ばれなくなるため、むしろ疲れやすさや息切れ・動悸などの症状を認めることが多いものです。また、ゆっくりと起こってきた貧血では体がその状態に慣れてしまっていて、かなり進行するまで症状が出ないこともあります。

貧血の原因は鉄不足以外にもさまざまな原因が

貧血の原因で最も多いのは、ヘモグロビンの材料である鉄が不足して赤血球が作られなくなる鉄欠乏性貧血です。鉄以外でもビタミンB12や葉酸の不足で赤血球が作られなくなる場合や、再生不良性貧血や白血病などが原因で赤血球をはじめとする正常の血液細胞が十分作られなくなる場合もあります。まれですが、赤血球が血管の中で壊れてしまう溶血性貧血もあります。

鉄欠乏性貧血でも、鉄が不足している原因が問題です。慢性的な出血が原因となっていて、検査で消化管のがんからの出血が見つかることもあるのです。貧血イコール、サプリメントで鉄分を摂ればよいと安易に考えるのではなく、検査が必要と指摘されたら、きちんと診断を受けましょう。

【参考】
『医師に聞けないあんな疑問 医師が解きたいこんな誤解』