酵素をドリンクやサプリメントなどから補う食品がブームですが、実際のところ本当に効果があるのでしょうか? 酵素の体内での働きや上手な補い方などを、医師が解説いたします!

【医師が解説】酵素ドリンクから酵素は補給できない!? 本当の効果とは

生きていく上で体の中の酵素は欠かせない

私たちは食べなければ生きていけませんが、食べただけでも「あるもの」が体内になければ、食べたものからエネルギーを取り出せません。また「あるもの」がなければ、食べたものを材料として体の成分を作り出すこともできません。そもそも「あるもの」がなければ、食べものの栄養素を体に取り込むこともできないのです。その「あるもの」とは「酵素」です。
例えば、試験管にアミノ酸を入れておいても何の変化も起こりませんが、人間の細胞の中ではアミノ酸が次々に結合して、DNAの設計図通りのタンパク質が作られています。これは酵素のおかげなのです。

生体内では、栄養素からエネルギーを取り出したり、栄養素を基に必要な物質を新たに作ったりといった、様々な化学反応が起こっています。化学反応が起こるには、一定以上のエネルギー(活性エネルギー)を持った分子が衝突する必要があります。そのため多くの場合、化学反応を起こすには、熱したりしてエネルギーを与える必要があるのです。例えば、いくら紙が燃えやすいといっても、机の上に置いておいたら自然に燃え出すということはなく、火をつけてエネルギーを与えることで初めて燃えるというわけです。

化学反応が起こるにはこうしたエネルギーが必要ですが、そうしたエネルギーを小さくすることで、反応のスピードを加速させる物質を触媒と言います。実は酵素は、生物が持つ触媒のことなのです。酵素があるおかげで、37度程度といった穏やかな体内の環境の中でも様々な化学反応がもの凄いスピードで進むのです。

酵素の種類は3000種以上 対応する物質が決まっている

酵素は一つの物質と思われるかもしれませんが、ヒトの体で働く酵素は3000種類以上にのぼり、それぞれ作用する物質が厳密に決まっています。
例えば消化液の中にもたくさんの酵素(消化酵素)が含まれています。そのおかげで食べ物の栄養素を体に取り込めるように小さく分解(消化)して、体に取り込むこと(吸収)が出来るのです。唾液に含まれているアミラーゼという酵素は、デンプンを麦芽糖に分解しますが、タンパク質を分解することはありません。
一方、ペプシンという酵素は胃の中で働き、タンパク質を分解しますが、でんぷんを分解することはありません。細胞の中でもいろいろな酵素が働いています。アルコールを飲んだ時には、アルコールをアセトアルデヒドに分解するアルコール脱水素酵素ADHが働き、アセトアルデヒドはアセトアルデヒド脱水素酵素ALDHという酵素によって分解されます。

酵素はタンパク質なので消化管の中で消化酵素による分解を受ける

よく、「年齢とともに酵素が消費されて減っていくので、酵素を食べて補給しなければならない」と言われます。また、たくさんの酵素サプリやドリンクがありますが、これらをとることで酵素を補うことができるのでしょうか。

まずは一般的に言って「酵素が消費されて減少する」ということが間違いです。年齢による変化はあるでしょうが、酵素は化学反応の触媒であって材料ではないので、反応の前後で消費されたりはしません。また、酵素の役割はさまざまであるため、すべての酵素が多ければ多いほどよいというわけではなく、どの酵素でも増やせばよいというものでもないでしょう。

それでは酵素をドリンクやサプリメントなどの食品でとる意味はないのでしょうか。酵素自体はタンパク質でできていますので、消化酵素で分解され吸収されるときにはアミノ酸(ないしはアミノ酸が数個結合したペプチド)となってしまいます。そのため、摂取した酵素がそのまま体の中で酵素として働くというのは間違いです。

ただし医師も酵素を薬として処方する場合があります。消化酵素の薬です。膵臓や胃腸の病気による消化不良の時には消化を助けるため、消化酵素を含む薬を処方します。こうした薬は、胃酸などで変化してしまわないよういろいろ工夫もしてあり、消化管の中で食物の消化を助けてくれます。

また、酵素ドリンクに酵素以外の体に良い成分が含まれていないとは限らないかもしれません。ビタミンや食物繊維などが含まれ、便通をよくしたりする効果のあるものもあるかもしれません。

執筆:月刊『からだにいいこと』編集 -株式会社からだにいいこと

【参考】
『医師に聞けないあんな疑問 医師が解きたいこんな誤解』