2017年4月にスタートした日本テレビの連続ドラマ「母になる」。
約3年ぶりに沢尻エリカが連続ドラマの主演を務めるということで、放送開始前から話題になっていました。小池栄子との演技対決を、毎回、ハラハラしながら見守っている人も多いのではと思います。

ドラマ「母になる」の主役・結衣の息子「広」は愛着障害?

誘拐犯に置き去りにされた子どもの心理を描く

沢尻エリカ演じる結衣と、藤木直人演じる陽一の間に生まれた息子広(こう)がある日突然、誘拐されたところからストーリーが始まります。当時、広はわずか3歳。
それから紆余曲折あって、結衣と陽一は9年ぶりに広と再会することになります。行方不明になっていた9年間、広は小池栄子演じる門倉麻子によって育てられていました。

生みの親と育ての親。子を思う二人の対決が見モノの、このドラマ。
簡単にいえば、結衣や麻子、それから結衣の友だちで同時期に娘を出産した、ワーキングママの莉沙子が、傷ついたり、迷ったりしながらも母として成長していく様子を描いたヒューマンドラマです。

ドラマを見ていて気になるのが、息子・広の性格について。
結衣や陽一と一緒に暮らし始め、3人の生活を取り戻そうとしたとき、広はとても大人しく、素直でよい子でした。
しかしその一方、結衣の作ってくれたお弁当を食べず、ゴミ箱に捨てたり、結衣に対して素っ気なく当たったりしています。
これは、育ての親である麻子に対する思いや、麻子が服役していた間、預けられていた施設に戻りたいという気持ちの裏返しだったのでしょう。
しかし、「大人しく良い子」という表の顔と、「冷たく素っ気ない」という裏の顔には、若干、違和感を覚えずにいられません。

5歳までに発症する「愛着障害」とは?

ここで浮かんでくるのが、「広は『愛着障害』なのか?」という疑問です。
「愛着障害」とは、「幼い頃、長期に渡って親から十分な愛情を与えられなかったことで起こる障害」のこと。
子どもはお腹が空いたときやオムツを交換して欲しいときなど、泣くことで養育者にアピールします。父親や母親はこれに応え、子どもの面倒を見ることでコミュニケーションを図ります。
こうした繰り返しの結果、築かれるのが「愛着(アタッチメント)」。要するに、養育者と子どもとの間で育つ心理的な結びつきです。
子どもはこの愛着をベースに、人に対する信頼感や自己表現などを高め、社会性を育んでいくのですが、乳幼児期にうまく愛着が育たないと、その後、子どもの発達にたくさんの障害が出てきます。
愛着が育たない主な原因は、養育者による虐待やネグレクトなど。近年、社会で取り上げられることが多い、大切なテーマですよね。

愛着障害のある子どもには、次のような症状がみられます。

・人間不信になり、人との積極的な関わりを避ける
・いつも他人に依存してしまう
・周りの目が気になり、常にビクビクしている
・行動が衝動的で、自制がきかないことがある
・他人の注意を引こうとしたり、無差別に親しげに振舞ったりする
・心から喜んだり、満足したりすることがなく、情緒的な反応が欠如する など

愛着障害はほとんどの場合、5歳以前に発症します。だから、この時期には養育者と子どもとの間に、しっかり愛着(アタッチメント)を育てることが大事なのです。
広が誘拐されたのは3歳の時。そこから9年間、麻子の手によって厳しくも愛情たっぷりに育てられたとはいえ、実の両親と離れ離れになっていたことは、少なからず広の心に大きな影響を与えたでしょう。
広の場合、暴力的だったり衝動的だったりするようなことはありませんでしたが、その反面、いわゆる“よい子”として誰に対しても親しげに振舞ったかと思えば、母親が作ってくれた弁当を無表情に捨てたりする二面的な性格に、愛着障害が表れているのかもしれません。

実は、育ての母親である麻子も!?

もうひとつ考えたいのが、実は、広の育ての親である麻子も愛着障害ではないのかということです。
故郷で長期療養中の母から「早く孫の顔を見せてくれ」と迫られ、信じていた男に裏切られ、挙げ句の果てに流産。
麻子自身、「お母さんは悪くない。お母さんの期待に応えることができなかった自分が悪い」と述べているように、幼い頃から母親に厳しく育てられ、大人になった今もなお、母親の過剰な期待で押しつぶされそうになっている様子がうかがえます。
愛着障害の症状がみられるのは一般に小学生くらいからですが、なかには30歳を過ぎても見られる人がいると言います。
誘拐犯に置き去りにされた広を見つけ、最初は看病するだけのつもりだったのに、やがて広を我が子として育てることを決意した衝動的な行動は、愛着障害のためだったのかもしれません。
そして、そうした行動に対してほとんど悪びれることなく、「広を育てた母親は自分」と結衣に堂々と名乗る自分本位な行動も、麻子自身、幼い頃から母親の愛情を受け取ることができず、愛着障害を起こしていることに由来するのかもしれません。

いずれにしても、「母になる」という事実が女性の人生にとってどのような重みをもつのか。そして、女性が母になっていく過程で、子どもがどのような心理的変化を見せるのか。視聴者に深く問いかけるドラマです。

執筆:月刊『からだにいいこと』編集 -株式会社からだにいいこと

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